文書作成日:2019/06/20


 不動産の贈与を行う場合の留意点等について教えてください。




 相続税対策として子供(20歳以上)への贈与をすすめられていますが、金融資産にそれほど余裕がないため、不動産の贈与を検討しています。不動産の贈与を行う場合の留意点等について教えてください。




 不動産の贈与にはコストがかかります。また、将来における問題も視野に入れ、総合的に判断する必要があります。




 相続税対策で生前に贈与を行う目的は、将来予想される相続税よりも低い税率(税負担)で財産を移転させることにあります。

1.相続税対策として生前贈与を活用する目的

 例えば、将来予想される相続税率が30%の場合、贈与税率が20%以下となる金額で贈与を行えば、相続税対策として有効といえるでしょう。しかし、これは金銭で贈与を行った場合であり、不動産の贈与については、必ずしも相続税対策として有効とはいえません。その理由は、不動産の特徴にあります。

2.不動産の特徴

 不動産を贈与する場合には、不動産の特徴をよく理解する必要があります。不動産を贈与することによるデメリットとして、主に次の3点が挙げられます。

(1)コストがかかる

 不動産を贈与することにより、次のようなコストがかかります。

(2)小分けが困難

 不動産は小分けが困難であり、1つ(土地は1筆、建物は1戸や1棟。以下同じ。)の価格が高額となります。よって、将来予想される相続税率未満で1つの不動産を全て贈与するには、通常、数年単位の長い期間を要します。贈与の回数が増えれば、当然に司法書士費用と税理士費用の負担が重くのしかかります。

(3)他の所有者との関係

 1つの不動産を、贈与税を少なく短期間で移転させる最適な方法は、贈与する対象者(共有持分の所有者)を増やすことです。しかし “共有”は、後々何かしらの問題が発生する場合が多く、おすすめできません。また、建物とその敷地(土地)をそれぞれ別の人に贈与することも、同様の問題が発生する恐れがあるため、おすすめできません。

 このように、不動産の贈与にはコストや手間、将来における問題があるため、基本的にはおすすめできませんが、例えば収益性が高い不動産であれば検討の余地があるといえます。

3.収益性の高い不動産の贈与

 不動産の相続税評価額は、賃貸することにより減少します。例えば、土地建物を全て賃貸する場合、通常、賃貸前の相続税評価額から土地は15%以上、建物は30%以上減少します。
 一方、市場で売買する賃貸不動産の価格は、土地と建物価格の積算ではなく、収益還元により決定するため、収益性が高ければ時価は相続税評価額を大きく上回り、結果として相続税評価額が時価の半分以下となることも珍しくありません。
 建物評価額は、時間の経過とともに減少していくため、一般的に、賃貸不動産の評価額は、相続時より贈与時の方が高額となりますが、時価の半分以下の評価額で早期に贈与することができれば、受贈者である子供は、評価額に対して高利回りの運用益を長きにわたり享受することができます。つまり、賃貸不動産を贈与することにより、毎年現金を贈与することと同様の効果が得られるのです。また、親であるご本人の所得が子供より高額の場合、ご本人の所得税対策にもなる可能性があります。

 このように、収益性が高い不動産の贈与はそうでない不動産の贈与よりもメリットがありますが、上記2. のデメリットを完全に排除できるわけではありません。不動産を贈与することによるメリットとデメリットを総合的に検証した上で、実行すべきかどうかの判断をすべきでしょう。


 以上のように不動産の贈与は、慎重に検討する必要があります。相続税対策でお悩みの方は、当事務所までご相談ください。


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